2019年6月5日
記憶の分類

複数のシステムにより、記憶の違いがあります。
短期間の記憶と長期の記憶では、仕組みが異なります。

時間の長さによる記憶の違い

短期記憶

短期記憶とは、ごく短い時間での記憶のことを言います。
一般に短期記憶というと、1時間前や数日前の記憶を指すと思っておられる方も多いでしょう。
実は、短期記憶とは、ざっとみて、1分前くらいまでの記憶のことを言います。

そのため、短期記憶のことを、「即時記憶」と呼ぶこともあります。

例えば、初めてのところに電話をする場合、私たちは、何らかのメモをみて、電話番号の数字を押します。
そして、その番号がつながって、話し始めた瞬間から、さきほど記憶していた電話番号を忘失します。

人は、瞬間的に覚えておくことができる数字の数は、概ね7桁と言われています。
これは、瞬時に記憶を保持しておく、「ワーキングメモリー」というシステムに依存していると考えられています。

近時記憶

近い過去の記憶を指します。
近い過去とは、早いものでは、数分前の記憶も含みます。
長いものだと、数週間になります。

「この前の日曜日に、誰々とどこどこに行った」
というような記憶が、これに当たります。

アルツハイマー型認知症では、この近時記憶に障害が出やすいことが特徴となります。

近時記憶と関係する場所は、海馬です。
海馬の神経細胞が死んで、萎縮すると、近時記憶の障害がみられやすくなります。

※ 参照 アルツハイマー型認知症では、海馬が萎縮します

遠隔記憶

古い過去の記憶のことです。
アルツハイマー型認知症の方でも、若い頃の記憶を鮮明に物語ることがよくあります。

時に、自分の家にいるにもかかわらず、「家に帰る」と出ていこうとして、家族を困らせる場合があります。
この場合の「家」とは、若い頃に住んでいた家のことを指していると思われます。
現実に、その家が壊されて存在しないにもかかわらず、記憶の中では、生きているのです。

こうした記憶は、海馬に蓄えられた記憶が側頭葉に移行していると考えられます。
コンピューターで例えると、データが、メモリーから、ハードディスクにコピーされて保存されているような状態です。