2018年5月15日
待てない精神科医(漫才編)

今日のブログは、漫才風のネタです。
ブラックジョークも混じっていますが、本音ではない、創作ネタです。
(著作権は、殿山勇次に属します)

登場人物
A:精神科医
B:同級生の友人
ーーーーー
A:よお
B:元気?
A:ああ、元気や
B:オレ、ほんま心配したわ
A:なんで?
B:だって、お前、昔から頭悪かったやろ
A:ほっとけ、勉強できんかっただけや
B:今頃、生きとるのかおもうた
A:それ心配されとるんか
B:ああ
A:きのう、会ったばかりやで
B:そうだった
A:それ、お前、ほんまはオレに消えい思っとるとちゃんか
B:まあ、そなに悪うとらんといてや
A:わかった。ところで、お前、ここで何しとるん?
B:わいは、じいさんのお見舞いに来とるんや。それで、お前は?ついに頭やられたん?
A:きついこと言うねえ。もっとやさしい言葉言えへんのん?
B:ああ、ごめんごめん。病人にきついこと言って。風邪ひいたん?ケガしたん?
A:いや、オレ、ここで働いているんや
B:えっ?働いている?ちっちゃい頃、野ぐそして、鼻たらしてたお前が?
A:昔のことは、もうええがな
B:ああ、それは、すまん。お前も変わったんやな。で、ここで何して働いとるん?
A:精神科医や
B:精神科医?なんや、それ?
A:なんや、それって…早い話が、こころで悩む人を癒すところや
B:ああ、わいがよう行っとるキレイなねえちゃんがおるところやな
A:そうじゃないがな
B:じゃあ、キレイな兄ちゃんがおるところじゃな
A:お前は、そのことしか頭にないんかい!
B:ああ、わいは日頃のうさをそんなのでしか晴らせなくなってしまったんや
A:そんな人にも精神科医
B:なんで?
A:悩みを打ち明けて前向きに生きる
B:ほうー、お前、前向きなんやなー
A:ほや。でも、困ったこともあるんや
B:なんや?
A:たまに話が長くなることがある
B:長い?そうなの?
A:あー、最強の時もある
B:(ちょっとあきれた顔で)最強って、どういう意味や
A:はっきり言って、ウルトラマンより強い
B:ウルトラマン?ウルトラマンって、あのウルトラの家族の一味か?
A:一味って、お前、悪党みたいによばんといてや
B:そやね、正義の味方やもんね
A:そや
B:それで、そのウルトラマンより強いって、お前どういう意味や?
A:ウルトラマンが10人かかっても勝てへん言うことや
B:なんや、それ?
A:ウルトラマンって、ほれ、あれ、3分しかもてへんやないか
(お腹のカラータイマーの所に拳をあててにぎったり開いたりする)
B:ああ
A:その10人力以上ということやな
B:ああ、なるほど。ほなら、最低30分は格闘するんやな
A:ほや。おれな、ラーメン好きやろ。それで、この前カップラーメン食おうとしたんや
B:ほー、カップラーメン。昼時やったんやね。
A:そや。そんで、看護婦さんに頼んで、お湯入れてもろうたんや
B:ほー、やさしい看護婦さんやね
A:でもな、話している間に麺がのびたんや。お前も知っとるように、おれ、のびた麺よう食わんやないかい
B:ほやな
A:やから、できて10分以上たったラーメンは捨てる
B:(うなずいて)ラーメン無駄にしたわけやな
A:そや。そいで、看護婦さんは10分たったら捨てて新しいの作っといてくれた
B:ほお、なおさら、やさしい看護婦さんやな
A:それがな、その時の話がごつう長ごうて、看護婦さんが5つもカップラーメン作るはめになったんやがな
B:なんやそれ、4つ捨てたいうことかいな。どない気のきかん看護婦さんや
A:やから、オレが使うカップラーメン代、月に3万円かかる
B:なんや、それ、お前、いつも同じ看護婦さんに作らせとるんかいな。それ、作らすお前に問題あるんちゃうか?
A:ほうかい?
B:ほうやで
A:何で?(開き直って)
B:何でって…お前、診察終わってから、作ったらええやないかい
A:ええやないかいって言うけどな
B:なんや?
A:ほやけどなあ
B:おう
A:おれ、診察終わった直後に新鮮な麺を食いたいんや
B:なんや、それ。麺がゆであがるまでの3分間が待てんのんかいな
A:待てん!(胸を張ってきっぱりと)
B:待てんてお前…
A:なんや
B:いや…
A:なんか、のどに食いかすつまったようなしゃべり方するなあ
B:それを言うなら、「歯に物がはさまったよう」やろ!
A:ああ、そういう言い方もあるな
B:そういう言い方って、お前、医学部出たんやろう?
A:出た出た
B:なら、どうやって、入ったんや!
A:そうそう、それが思い出せなんのやなあー
B:思いだせんって、試験くらい受けたんやろう
A:それがなあ
B:それが
A:受けたこと思い出せん
B:思い出せんって、なんで?一生にそうたくさんないやろう?
A:そうやなあ
B:そうやなあって人ごとみたいに
A:おれ、入学試験の会場に入る時、みんなと違う玄関やった。そしたら、そっから先の記憶がとんで、気がついたら合格してたんや
B:なんや、それ!裏口入学かいな
A:おれは知らん、知らん。おれのおやじは知っとるかもしれんがな
B:やっぱり裏口や
A:まあええがな、ええがな
B:なんでええんや
A:ちゃんと免許持っとる
B:免許って…お前自動二輪のちゃうか?
A:ちゃうって
B:ほなら、大型車
A:ちゃう
B:牽引車
A:ちゃうって!車の免許やないって
B:ほなら、危険物取り扱い主任者か(ここからしばらく両者早口で)
A:ちゃう
B:ふぐ調理師
A:ちゃう
B:カラーコーディネーター
A:ちゃう
B:システムアドミニストレーター
A:ちゃう
B:1級建築士(どんどん早く、一気に弁護士のところまで)
A:ちゃう
B:不動産鑑定士
A:ちゃう
B:税理士
A:ちゃう
B:司法書士
A:ちゃう
B:弁護士
A:ちゃう、ちゃう!(手を何度も振りながら否定する。そして、息継ぎ)そんな免許とれるなら、オレもおやじもなんも苦労せんかったわ
B:(笑いながら指さしして)やっぱり、お前、裏口や
A:……(ばれたか!という驚いた顔をして、左手で口をふさいで右手を上げる)
B:まあ、ええがな、ええがな。これからはほんとのこと言いいな。それで、「あなたは、なんのめんきょをとったのですか?」(一言ひとこと、区切るように)
A:だから、「い・し・めん・きょ」(ここも一言ひとこと、区切るように)
B:…えっ?(驚いたように振り向く)
A:えって…
B:お前って、医者やったん?!
A:医者やったんって…だから、最初に精神科医や言うたやないか
B:ああ…精神科医って医者だったんだね
A:ほうや
B:ほうか
A:ほうなんよ
B:なるほど。入学してからは、ちゃんと勉強して、医師免許とったんやな。えらいがな
A:ああ、それがな
B:なんや
A:ちゃんと合格した
B:なんや、自慢かい!
A:いや、ちゃんと合格したねんけどな
B:ああ
A:お前、医師国家試験ってどないな試験か知っとるか?
B:知っとるかって、どしろうとのわいが知っとるわけないがな
A:それが…医師国家試験って、ごたくなんや
B:ごたく?ああ、勝手な言い分をごじゃごじゃ言うやつじゃな
A:いや、そうじゃなくて…
B:なら、なんや
A:ごたくというのは、五者択一。5つの選択肢から1つの正解を選ぶものや
B:ああ、大学入試で大勢受けるようなやつね
A:そうそう、シルバーシート
B:それを言うなら、マークシートやろ!
A:ああ、それそれ。マークシートで6割とれたら合格なんやけど、試験の1週間前の模擬試験で、オレ2割しか正解できなかったんや
B:お前、5択で2割いうたら、おみくじで選んだのとかわりないで
A:そや、そうや。そいで、オレな、なんか、この問題おかしいんやないかと思ってな、たまたまやってきた郵便配達のおじさんに、オレがやった問題を10問選んで出してみたんや
B:郵便屋さんも、ようそんなヒマなことにつきおうてくれたな。それで?
A:それがな、郵便屋さん、6割正解しとるがな
B:なんや、お前、郵便屋さんに負けとるやないか
A:ほいでな、オレ、ショックで1週間寝込んだ
B:ほー。それはわかるね
A:そいでな、立ち直った1週間目の朝、試験日だということに気がついた
B:なんや、お前、それまで試験勉強せえへんかったんか
A:まあ、すんだことは、気にせん。それで、気を取り直して試験受けた
B:うん、受けた。まあ、受けな受からんわな
A:で、一問目に気づいた
B:なにに?
A:うん。オレにはできない問題なんだって
B:あはははは。それが実力というものよ
A:でな、できない問題を鉛筆かじりながら考えているうちに、あることに気づいた
B:えっ、なに?
A:うん。オレの鉛筆が六角形だということに
B:それがどないしたんや!
A:でな、鉛筆のひとつひとつの面に番号を書きこんだんや
B:番号?
A:そう。六角形だから1、2、3、4、5、6って。
B:ほう
A:五択のマークシートやから、1から5までしか選択肢がない!
B:うん(リズムに乗って)
A:で、鉛筆ふって、1が出たら1、3が出たら3、5が出たら5とマークシートに書き込んだんや
B:なるほど。で、6が出たらどうするんや?
A:6は、もう一度振るの目や
B:すごろくかいな
A:で、そうやって、すべてのマークを埋めてあがり
B:人生ゲームかいな
A:で、後は神さまに祈った
B:バクチと一緒や!
A:で、晴れて免許をもらえたとさ
B:なんや、それ!お前、裏口から入って、運で出たんかいな
A:(はっと何かに気づいたように)ちょっと、ちょっと、話の長いオレの患者が歩いて来よる
B:ほなら、どうする?
A:うんこいく
B:また、ウンかいな!
A:ウンも実力のうち
B:ええかげんにせい!
(失礼しました。どうも、ありがとうございました!)

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※注:分野は異なりますが、不動産の資格である、宅建士の試験は、5択より易しい4択で、50問の出題ですが、合格率は15%程度にとどまっています。
これは、運では、試験に合格することができないということを示しています。

自慢に聞こえたら、申しわけありません。
私が、宅建という試験の存在を知った時、試験が開催される日まで3ヶ月しか猶予がありませんでした。
その間に、本屋で教材を買い、独学で勉強して、1回の受験で合格しました。

一方、医師国家試験は、2日間にわたって、朝から夕方まで試験が行われます。
問題数は、200問です。
しかも、これを間違えたら、患者の生死に関わるという地雷問題を取り入れています。
つまり、地雷を踏んでしまったら、正解率が高くても、不合格となります。
運だけで合格することは、宝くじの1等賞に当選するより難しいことになります。
宅建の試験より、医師国家試験の方がはるかに難しいのです。
現実は、甘くありません。