2022年6月2日
睡眠の大切さは、ますます認識されています

眠れないと、しんどい、調子が悪くなる。
不思議なことですが、1日徹夜しただけで、翌日、こたえます。
若くて、エネルギッシュな時は何とかなるでしょう。

しかし、年齢を重ねてきた、過重労働が続いている、疲れがたまっているという場合には、ことさら睡眠不足のつらさを痛感することでしょう。

脳という器官は、とても贅沢な臓器で、体重に占める割合が少ないにもかかわらず、人が消費するエネルギーの20〜25%くらいを使用しています。
さらに、脳は、筋肉とは違って、「グルコース」というエネルギー源でしか働きません。

そういう具合ですから、脳は、人が起きている間(覚醒している間)、常に働き続け、カロリーを消費しています。
リラックスして、コーヒーを飲んでいる時でも、脳は活動しているのです。

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ここで、1つの疑問が生じます。
筋肉を使いすぎると、ピルビン酸などの老廃物(代謝物)が蓄積します。そのため、筋肉痛などの症状が出ます。
しかし、休養をとると、これらの老廃物は、除去され、身体も楽になっていきます。

ところで、脳の場合はどうでしょうか?

たまった老廃物を、睡眠をとらずに活動していて除去できると思いますか?
睡眠がとれない間は、しんどさが増しても軽くなることはないことを実感することでしょう。

脳の新陳代謝を行って、老廃物を始末するためには、睡眠が必要であると、感覚的にも理解できると思います。
つまり、睡眠をとる以外に楽になる方法を見つけることができないのです。

※ あったら、教えて下さい。まず、自分が楽になるために試してみます。

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さて、睡眠の他に食事をとらないと生きていけないことは、古来からの常識ですが、健康な人であれば、1週間、食べ物を口にしないでも普通は生きています(水分摂取は、必要です)。

飢餓状態の中では、糖がなくても、タンパク質や脂肪がエネルギー新生によって、しのいでくれるのです。

ところが、1週間、眠らないことは、ほとんどの人には無理ですね。
ギネスブックに掲載されている最長不眠時間は、10日間少々です。

生理的に食事をとることよりも断眠に耐えることの時間の方が短いのです。
不思議ですね。食べないことより、眠らないことの方が難しいということです。

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最近の知見で分かってきたことがあります。

脳神経細胞の周りに、グリア細胞、アストロサイト細胞、樹状細胞など、複数の細胞があることは、かなり前から知られていました。
しかし、そのような細胞がどのような働きを担っているかについては、謎につつかまています。

近年、グリア細胞が多い方が、知能の向上に役に立っているとみなされています。

また、他の細胞は、脳神経細胞に送る栄養や老廃物の除去に関与していると考えられています。
脳神経細胞もエネルギーを受け取って、有害なものを除去しないと活動できないことは理解できますよね。

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少し話が飛びますが、一例を挙げます。
タウ蛋白という老廃物が脳神経細胞にたまっていくと、脳神経細胞そのものにダメージが及んで死滅します。

こうした大量の脳神経細胞が死滅していくのが、「認知症」です。

有害物質を取り除くことができないと、脳神経細胞が壊れていくという事実は、知られていました。

よいものを入れて、悪いものを排泄しないと、具合が悪くなっていくということは、直感的に理解できますよね。

認知症は、老廃物を除去することができないことで起こる現象です。
しかし、その老廃物を完全に除去する、あるいは作らないという治療法が、今の科学にはないのです。

若い人は睡眠不足になって、老廃物を除去することができなくなっても、いきなり認知症になるということは、ほとんどありません。

しかし、集中力がなくなる、注意力が低下する、物忘れが多くなるなど、一時的な認知機能の低下はよく起こります。

脳の機能を保つには、しっかりとした睡眠をとる必要があるのです。

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007のダイ・アナザー・デイでは、DNA変換療法によって、機械を使って強制的に睡眠をとる方法が描かれています。
これは、架空の物語で、現代の科学では実現できません。

ただ、この映画においても、眠らないということが最高の方法ではなく、何らかの方法で睡眠をとることが必要であると教えてくれているように感じます。

ここで話を戻します。

人の生存欲求の中でも睡眠欲求は、最も基本的なものであることは間違いありません。

臨床的にみても、睡眠と食事がとれない人の場合、睡眠が確保できない内は食欲がわいてこないことが多いことを経験しています。

睡眠を軽視しないでください。

それは、健康の源なのです。