2022年1月4日
インバウンドは、よいことなのか?

日本に外国人が押し寄せたのは、なぜか?
爆買い、インバンドと、もてはやされた。
コロナ禍で海外旅行客は99%減ったが、爆買いの本当の理由は、日本が好きだからではない。

平成生まれの人は知らないが、昭和の最後は、バブルのただ中であった。
1ドル80円の円高で、海外製品がずいぶん安く思えた。

日本人は、今でも(コロナ前まで)ハワイへの旅行が好きだ。
1980年代は、それに輪をかけて、ハワイ客のブランドショップに日本人が押し寄せていた。
特に、ルイ・ヴィトン(本社:フランス)のお店は、日本人客で溢れかえっていた。

ハワイはアメリカに属するが、客はアメリカ製品を買うとは限らない。
当時の日本人、特に女性は、買い物をするだけで、2泊3日の旅行に出かける人もいた。

理由は簡単だ。
ハワイの方がブランド物の品揃えが多く、しかも安いことによる。

私は、一度だけハワイに滞在したことがある。
1999年のできごとである。
その時はもう、日本のバブルは弾けきって、覇権国アメリカを脅かすような国力はなかった。

それでも、ハロウィーンのその日、ルイ・ヴィトンの店内の客の半数以上は日本人が占めていた。
私は、そこで、6本の鍵を差し込むことのできる、キーホルダーを買った。
日本では、4本までの製品しか見当たらなかった。
キーホルダーは安い部類に入るから、2万円少々で購入できた覚えがある。
日本では3万円以上はすることだろう。
(現在では、5万円以上するか)

キーホルダーでこれだから、バッグだとさらに値段の開きが大きくなる。
日本では30万円で売られている製品が20万円ほどで買えることがある。
首都圏に住んでいる女性が格安パックの5万円〜7万円で行くと、商品代だけでお釣りが来る。
それで、週末旅行を利用して楽しんでいた人もいたわけだ。

今の若い人には、信じられないでしょう?

さて、中国人の爆買いに話を戻しましょう。

彼らは、本国にない日本製品に興味を抱き、持ち帰ったという事情もある。
日本製は、気配りが行き届いて性能がいい、と鼻高々になりたい気持ちがある。

しかし、事の本質は、そうではない。
本国にいてもお金を出せば買うことのできる製品がたくさんある。

辛口に言えば、日本円が安くて、本国で手に入れるより、直接、日本にやってきて買う方が安かったというオチになる。

同じルイ・ヴィトンのバッグを買うにしても、中国では、正規代理店で購入しても、偽物がある。信じがたいことだが、店員がすり替えることがあるのだ。
「このヴィトンのバック、日本の銀座で買ったのよ」と告げると、それは、間違いのない「正規品」と認められる。
同じバッグであっても、上海で買ったものと、銀座で買ったものでは、信頼性でわずかに価値の違いが出てくるわけだ。

これは、イタリアの高級ブランドで頻繁に起こる話として有名となった。
同じバッグでも、made in Italy と刻印されているのと、made in China と記されているものでは、買い手の印象が異なってくる。
そのため、手の器用な職人さんを中国からイタリアに呼び寄せて、バッグや装飾品をイタリアで作る。
同じ人の手によるものでも、中国内で作れば、made in China、イタリア内で作ればmade in Italyとなる。
言葉遊びのような本当の話だが、これだけではすまない。

本物と同じ製法を習得した中国人が、独自に会社の管轄外の製品を作る。
それを外に流すと、正規品と同じにみなされるか、極めて似通った偽物とみなされるかのどちらかになる。

高級物の偽造品というものは、以前から存在していた。
それが、見分けがつかないほど肉薄した理由が明白に見つかった。

さて、ヴィトンはイタリア製ではない。
が、どこまで偽物が内部に食い込まれているのか?

おそらく、本国と日本の正規代理店では、大丈夫だろう(と勝手に思っている)。

ハワイで買ったキーホルダーは、おそらく大丈夫だろう。
現在も持ち歩いているから、もう20年以上も使っている。
そして、今なお堅牢さを保っている。