2018年11月15日
書類を書くことのしんどさ

以前、私は、書類を書くのが早かった。

スピードが速いかどうかは分からないけれど、事務から届いた書類を書き上げる時間が早かった。
だから、書類の山になるということもなかった。
書類ホルダーは、その時に書けないものを除けば、概ね処理していた。

だから、書類入れを空にしておくことが1つのポリシーであり、快感であり、誇りであった。

診療科とその人柄によるが、書類をどのくらいの期間で処理するかという事項には、差がある。

私がざっくりみた感じでは、8割方の医師は、書類作成に対し、後手に回っている。
書類が仕上がっていない内に、次の書類が来るという具合である。

診療後に病名を入れるかどうかについても、たいていの医師は、あまり入力しない。
事務にせかされて、入力するということが実情だ。

だって、ひっきりなしに院内携帯がかかり、診察と処置のために、時間外労働している人間に、形式だけの書類を作成するための時間と労働意欲は残っていない。

ゆえに、医療クラーク、医療秘書という職種が最近、登場したことには意味がある。

医師が行う診療行為の向上には役立たず、単に後処理という退屈で味気ない仕事が、案外多いことに起因する。

特に、電子カルテが登場して、これまで事務員がやっていた仕事を医師がしなければならなくなった。
これは、非効率きわまりないものである。
事務員がいらなくなるという名目で高い金額をかけて導入した電子カルテは、確かに事務員を削減することができたが、それと同時に医師の仕事を増加させた。

IT業者にのせられて、時給の低い事務員をリストラして、病院長は喜んだかもしれないが、今度は、時給の高い医師にその仕事が回ってきた。

その結果、どうなるか?

莫大な金額をITにかけたにも関わらず、仕事は効率化しない。
そして、元々、ブラック的に働かされている仕事の多い医師は、ますます事務作業を滞らすことになる。
一例をあげると、ある患者が退院した後の退院サマリーをかけないでいる内に、同じ患者がまた、入院してしまう事態がでてしまった。

そのため、医師の診療補助をするために、医療クラークが登場した。
さらに、大きな病院では、外来診療を行う医師1人に専属の医療秘書がついている。

当初、電子カルテを導入する、うたい文句は、事務員を削減できて、経費を削減できるというものであった。
ところが、いざ、蓋を開けてみると、既存の事務員を削減することはできたが、後に、医療の効率化を考えると、別のカテゴリーの事務員を配置せざるを得なくなった。

これ、なにか、おかしくない?

国が押し進めている、IT化にのせられ、踊らされている?
医師には、ITに費やす費用と価値が分からないから、口車にのせられて、ITを導入したものの、結局は、労働集約的な医療業界の本質を変えることはできなかった。

その結果、人件費は同じで、ITにかかる費用だけ増加してしまった。

医師は、大きな手のひら(それは、釈迦のものではない)にのせられている、孫悟空のような存在のようにみえてしまう。