2017年4月15日
ドクターXの医局制度は、不自然

連続ドラでは、視聴率20%こえの圧倒的な支持率を誇る、ドクターX。
ドラマとしては、面白いが、現実とはかなり乖離している。

ドラマの解説に、「白い巨塔が続く」とナレーションがあったが、医局制度は、一時期、崩壊の危機に瀕していて、砂上の楼閣のような状態であった。

それは、小泉内閣時代に、医局制度が悪だということで、研修医制度を開始したことに端を発する。
これまで、大学病院の医局に存在しないと、その後の出世や就職先に困るということで、大学教授の人事権は大変強いものであった。

そのしきたりが、研修医制度によって、「どこにでも就職してもいいんだよ。大学を通さなくても食い扶持はあるからね」と保障されたところ、新入医局員の動向は大きく変貌した。

・都市部を指向する若者が多くなり、田舎で研修する医師が減った。

・研修医の負担が軽くなった分、中堅医師の負担が増加した。

・一度、入局した研修医も、後に自由に病院を選ぶことを知ったため、厳しい指導がやりにくくなった。ちょっと注意しただけで、「辞めます」と本当に旅立っていった新人がいて、指導医も気を遣うようになった。

・人数がまったく足りていない医局があり、教授自らが、最前線に立たなければならないところも出てきた。また、人手不足だから、残った医局員へのしわ寄せが来る

などの事情があって、白い巨塔は、一気に権威が失墜したのであった。

昔は、教授の権力が強く、教授がボソッと言った何気ないことも命令として従わざるを得ないところもあった。
ある医局員が教授の部屋に呼ばれた。
「君に頼みがあるのだが、来月から、○○町の△病院に赴任してくれないか」と僻地への異動の話を転勤の3日前に聞かされて、泣く泣く従った人もいる。
要求をのまないと、今度の人事に大きな差し障りがあるからだ。

ただ、当時の医局制度は、医師の自由を奪ったが、地方に医者が行き渡るようにする大きな力があった。
先の例のように、どこかで、医師の転勤や退職があって、ある病院で医師が不足すると、教授の有無を言わせない、暗黙の圧力で、医師を地方に派遣していた。
だから、田舎でも医療が円滑にできていたという側面があったのだ。

それが、研修医制度によって、医局が崩壊して、人手が足りなくなると、地方に回すことのできる医師がいなくなり、過疎地での医療は困難となった。
送る人材が絶対不足になっている。
また、教授が強く要請すると、「医局をやめて、他の病院を探します」という事態に陥った。
医師の転職サイトが増えたのもその頃からかもしれない。
こういう事情で、白い巨塔であった医局は、必要とされるところに案配よく医師を派遣する機能を失ったのだ。

この10年の地方の医療崩壊をみて、厚生労働省も思うところがあったのかもしれない。
最近は、専門医制度を使って、研修医を再び、大学病院に戻す仕組みを作ろうとしている。
研修医がステップアップして、専門医を取得するためには、指導医の判子を必要とする。
その指導医が、大学病院ならびに、かなり大きな中核病院でなければ成り立たないようなしかけを作っているのだ。

現時点で、私は、専門医制度での指導医の資格を持っている。
しかし、指導医の資格保持のハードルを設けて、一部の人しか更新することができないようになった。
一番の問題は、研修医を指導した実績だ。
私は、一人しかいないクリニックで勤務しているため、現実に研修医を指導することはない。
ということは、現在の資格期間が満了した時点で、次の資格を継続する権利を失うことになる。
つまり、研修医が多く存在する大学病院ならびに大規模中核病院の指導医でなければ、実質、指導医の更新ができないことになる。
これで、現在資格を有している指導医の多くは、淘汰されるだろう。
研修医は、指導医の元で研修を受けないといけないため、先ほど述べた大学病院を中心とした中核病院で研修をしなければ、専門医の資格を取得することができないことになる。
なかなか、よく考えられた姑息な制度だ。

今後、白い巨塔が復活するのか、そうでないのかは、明確に推定することはできない。
ただし、以前より厳しい基準を設けようとしていることは確かである。