2017年10月26日
一度、階段を降りてみる

人生…
がんばっても、うまくいかない時がある。

登っても、登っても先が見えない。
このまま行って、大丈夫だろうか?

不安に思う出来事に遭遇する。

うつで、仕事がうまく回らなくなって、
休んでいる患者さんで、
こういう状態になる方がよくおられる。

少し休んだら、早く復帰しないといけないと考える。

「復帰して仕事ができる自信はありますか?」
そう訊ねた時、
「正直言って分かりません」
と言われる方は、
7〜8割方、失敗する。

冷静な会社は、
「十分、よくなってから復帰しなさい」
と言う。
中途半端に来て、また休むと、お互いに困る。

多くの人は、一度、失敗すると、
二度目の挑戦は、慎重になる。

それでも、あせって、
また山登りする方がおられる。

いい、悪いの問題ではない。
その人が、山登りをするのに
適した体力と技術を持ち合わせているかどうか、
それが鍵になる。

実際、山登りをする時、
体力、技術、装備、コンディション、季節、天候、時間など、
様々な要因を見極めてから行わなければ、
最悪、死を招く。

一度、登山に失敗して、
何の改善や工夫を行わずして
再チャレンジしても、
失敗することは目に見えている。

でも、人生の問題では、
それが自分で自覚できないことがままある。

自分の目では、
自分の置かれた環境にいる、
「自分」を観察することができない。

だから、あせりに身を置くと、
暴挙に出ることが多くなる。

どうしても、すぐに二度目のトライを
しようとする方に訊ねたことがある。

「あなたが登る山には、
 先に通じる道がありますか?」

「分かりません」と答えられた。

私が、ポロッと漏らした。
「もしかしたら、道がないかもしれませんね」
「……」
その方は、黙した。

続けて、私が質問した。
「どうしたら、いいと思いますか?」
「いや、どうしたら、いいのでしょう?
 分かりません」

家なき子でアニメにもなった、
「小公女」の話を持ち出した。

小公女の主人公、セーラは、裕福な家に生まれたが、
父親が亡くなった後、学校から、ひどい仕打ちを受けるようになった。
寝る場所も、快適な部屋から、屋根裏に変えられた。

そこで、いくどもくじけそうになりながらも、
希望を持って生きていった。

そんな中で、このような一節がある。
「上に登ろうとしても、どうしてもうまくいかない時があるの。
 そういう時は、一度、階段を降りるの。
 そうしたら、上に通じる階段が見えてくるわ」

同じことをワコールの創業者も言われていた。

我々は、困難に遭遇した時、
冷静に自分の位置確認をした方がいいのかもしれない。