2015年11月23日
三つ星レストランから海外に飛び出たお店

世田谷区にあって、日本一、予約のとれない店として、紹介されたお店がある。
鮨の「あら輝」という店である。

10席ほどで2交代制の店内は、いつも満席。
たけしの番組も含めて、テレビにも出ていたので、宣伝効果もあった。

この店は、世田谷区にあった時、銀座の一流店に負けない内容と味のものを1万5千円少々で用意していた。
ミシュランの星はとっていなかったが、これは、辞退していたのかもしれない。

後に銀座に店を移す。
この時からの価格は、2万5千円からになっていたようだ。
ミシュラン3つ星をいきなり獲得する。
おそらく、前々から星の話はあったのだろう。

銀座に店を構えて3年ほど経つ。
完全の軌道に乗った頃、また店の移転を考える。

今度の移転は、容易ではない。
海外進出だからだ。

パリ、ロンドン、ニューヨークなどの候補から考えた結果、ある時期からロンドン以外は考えられなくなったという。
その理由の1つは、娘さんがロンドンに留学するという理由がある。
そして、さらに野望は、ロイヤルファミリーに食べてきてもらう店にするためにとなる。

移転する時、2つのホテルから、オファーが来ていた。
テナントの候補は、いくつも用意されていたが、2つしか見なかった。
たくさん見ると、かえって分からなくなるからだという。

そうこうしている内に別の話が持ち上がった。
完全プライベートクラブでシェフをしてみないかという話だった。
そのクラブは、いわゆるセレブしか受け付けない、完全エクスクルーシブなクラブで、試しに招待された時は、トム・クルーズがそこにいて、驚いたという。
握手してもらって、感激して、そこでの出店を考え、ホテルの話はお断りした。

しかし、ここに惹かれたことで魔が差したのか、決めていた道が迷宮に入ることになる。
業務ビザで就業すると、働いている間はいいが、その後、「あら輝」という屋号をクラブにとられることになる。
自分がその屋号を取り戻すためには、大きな額のお金を支払って、権利を買い戻さなければいけなくなる。
独立を謳っていたのに、いつの間にか、子飼いにされそうな羽目になり、中止。

その頃、店主も参って、実質、軽いうつ状態にあたる、「適応障害」という病名をもらうことになってしまった。

その後、別のところに出店しようとしたが、借金ではなく、自己資金でなければ店を出せないということが判明し、9割方まとまっていた話も頓挫した。

それでも、ロンドン出店は決めているという。

私がこのドキュメンタリーを見たのは最近だが、話自体は、2年以上遡っていた。
その後の話がどうなっているのか分からないため、いろいろ検索してみた。

すると、昨年(2014年)の10月、ロンドンの一等地に正式に店を構えたという記事をみた。
日本語で、「背広(せびろ)」の語源となったストリートに近い場所に店はある。
10名入るかどうかの店にマンツーマンになるくらいのスタッフを揃えている。

メニューはお任せだけの二部制。
金額は、300ポンド(現在のレートで約57000円)のみ。
銀座の店の約2倍ほどもする。
完全に富裕層にターゲットを絞っている。

この先、ロイヤルファミリーが来店するのか。
あるいは、もう来店したのか。

潰えたかもしれないと思った夢を実現されたようである。
年齢を考えると、これが最後の出店になるだろう。
本人も、そこが最後の地だと言っていた。

銀座であぐらをかいていても、儲かっただろうし、名声も得ていただろう。
その挑戦は、なかなか常人にはできないものだと思われた。