2017年11月12日
求人の不思議な需要と供給の関係

ここ最近、求人倍率が高くなっているようです。
有効求人倍率1.48は、バブルの頃の数字を上回ると言われています。
だから、昨年と今年の新卒学生は、売り手市場で、数年前には難しいかなと思っていた企業に就職できる可能性が高くなりました。

4年以上前は、就職氷河期で、新卒の1/4〜1/3の学生の内定が決まらなかったことと比較すると、驚くべき変化です。
これは、世界経済の市場拡大と、日本ではアベノミクスによる恩恵かもしれません。
私は、アベノミクスは、賞味期限切れだと感じているのですが、いくらかの効用はあったのかもしれません。
逆の立場から言うと、巨額な金をつぎ込んで、何の効用もなければ、ただの浪費ですから、目に見える一定の効果は期待したいものです。

ところで、こういう成果をもたらしながら、実現していないことがあります。

世の中の物やサービスルは、主に需要とサービスの関係で価格が決まっていきます。
当初、その相関性が乖離していても、やがて落ち着くものです。

2年くらい前に感じたことでしょうか。
私が通勤している道沿いにトヨタの別ブランドである、レクサスの店舗があります。
以前には、その店舗には2〜3台くらいしか中古車の展示在庫がありませんでしたが、その在庫が次第に増えていきました。
しばらく経つと、20台以上も抱えている様子がうかがえました。
明らかに需要と供給のミスマッチです。

しかし、レクサスの認定中古車情報をみても、価格は高止まりしたままです。
これは、購買意欲が起きないと考え、しばらく様子を見ていました。

それが、最近、調べてみたところ、以前と比較して、価格が下がっているように思えました。
在庫が増えっぱなしで困る状態になったのでしょうか。
以前は、少数の展示中古車を日々、格納していましたが、台数が増えると、そういうこともできなくなり、野ざらしになっていました。

私の感じ方が正しければ、レクサスの中古車市場において、需要と供給のマッチングが起こりつつあるということになります。

振り返って、労働市場について考えてみましょう。
需要と供給の価格のマッチングがあるならば、労働者の賃金も、需要に合わせて上昇していくことが自然です。
しかし、現実には、そうなっていないことに違和感を覚えます。

一部の大企業の社員や公務員の給料は、多少上がったようです。
しかし、その他の多くの人は、景気のよさを実感していません。
賃金の上昇は、正規職員よりも、むしろ非正規職員の方に流れているという話があります。

企業は、過去の行く重なる経験で、「今」がよくとも、その先の見通しが立たないことを知っています。
確実な未来は、見えないのです。
そのため、業績のいい時に、内部留保をため込むことが多くなり出しました。
賃上げをしないで、将来の危機や必要経費に備えるのです。

投資も思ったほど伸びていません。
先の不安によって、控えていることが一因です。
また、投資は、儲けたお金の内部留保で賄い、なるべく借金をしない舵取りをしているようです。
そのため、市場にお金が溢れていても、優良企業は借りたがりません。
貸してほしいのは、資金切りに困っている企業ばかりです。
ですから、銀行の貸し出しも伸びないことになり、市中にお金が出回らないのです。

さらに、デフレは、未だ払拭されていません。
インフレ2%達成目標は、日銀が以前から声高く唱えていることですが、その目標は、達成されず、群衆で叫ぶシュプレヒコールを日銀がひとりでささやいているような状態です。

つまり、物価が上がらず、利益も確保できないから、賃上げできないという構図もできあがっています。
インフレが必ずしもいいとは言えません。
ただ、ある程度の価格と利益の確保ができなければ、賃上げできる原資が会社に残らないのです。

現在、求人という需要がありながら、それに見合う見返りを出せない状況は、異常事態であると感じています。