2023年4月5日
オートファジーが働くと、自己を守ってくれる

生物は個体を守ろうとする。
しかし、個体を守るためには、その個体の微細な細胞を排除する仕組みが必要となる。

尿や便は、体内に不必要な物質を排出していることは、経験的にもご存知だろう。
個体にとって有害な物質を取り除く方が個体の生存に有利に働く。

オートファジーとは、細胞が、自分の成分を自食、分解する機能である。
それが、何のためなのか、随分前には分かっていなかった。

その答が冒頭の文となる。

例えば、アルツハイマー型認知症では、βアミロイド蛋白が脳神経細胞に蓄積することにより、神経細胞が壊死して、喪失してしまう病態である。

パーキンソン病では、中脳の黒質線条体に、シヌクレインというタンパク質が蓄積することにより、そこに存在している細胞が死滅する。

このように損失したミ蛋白を早期に除去することによって、神経細胞を守る役割を果たしている。

ミトコンドリアが損傷すると、エネルギーを産生することができなくなり、個体全体の衰えや老化をもよおす。

必要なもの、さらに言えば、有害なものを除去することで、個体全体の利益になる。

こういうメカニズムが備わっていることは、生物の仕組みとして意味がある。
また、どのようにして、このようなメカニズムが備わったかは、驚異であり、謎も含まれている。

出典:吉森 保 大阪大学大学院教授 ブルーバックスより