2015年7月30日
吉野家のライバルは、すき家ではなかった

長年、吉野家は、牛丼チェーン店で、トップの地位にいました。
創業が1899年(明治32年)ということですから、当時は、「洋食屋」という感じだったかと勝手に想像しています。

ぼくは、学生時代にたまに利用していました。
安いけど、うまいと感じる日もあれば、「胸焼けする」と思う日もありました。

調べてみると、1980年に一度、吉野家は、120億円の負債を抱え、会社更生法の適用の申請をしており、事実上の倒産をしていたのですね。

さて、それでも、牛丼チェーンでは、トップで名が知られていましたが、2008年についに後進に追い越されました。
1番手となったのは、ゼンショーが経営する「すき家」です。

ぼくは、すき家は一度行っただけで、二度とのれんをくぐらない決意を固めた人間ですが、世間的には、安さとメニューの豊富さに惹かれて、躍進したようです。

ただし、問題もいくつかありました。

1 夜間での盗難事件の多発
これは、夜間は一人勤務の上、レジの配置が悪いという、チェーン店ならではの弱みが出たわけですが、幾度も届けられる盗難届けに警察が勧告したにもかかわらず、深夜時間帯での人数の強化は、図られなかったようです。
2010年、飲食店を狙った強盗被害は、121件でしたが、その内、すき家における件数が57件と半数近くに及びました。
2012年以降は、強盗の件数自体は減少したものの、全体の発生件数の85%をすき家が占めるという異様な状況となっていました。

2 勤務形態に関する問題
雇用が、いわゆる、労働基準法にあっていない形態となっています。
残業代の未払いがあり、大きな問題となりました。
国会の委員会にも取り上げられ、マスメディアで報道された後は、深夜割り増し残業代を支払うと発表したものの、過去の分についての支払いには応じていない様子です。
こうした労働基準の違反については、裁判でも争われました。

3 店舗の一時閉店
労働環境に怒りをあらわにした従業員が、申し合わせて退職。
2014年、店員不足による一時閉店に追い込まれた店がいくつもできました。

こうした事情により、すき家は、「ブラック企業」と認識する人が増えました。

さて、ここからが本題です。

すき家の勢いが衰えた今、吉野家は有利な立場に立っているのでしょうか?

ぼくは、先の述べたように、すき家には行かない人間なので、「すき家か吉野家か?」という選択肢はありません。
すき家は行かない。吉野家に行くかどうか?

ある日の深夜、お腹が減って、吉野家に行くことを考えました。
でも、考えただけで行きはしませんでした。
他にも深夜営業をしているお店を思い浮かべました。
その結果、下した意思決定は、「コンビニに行く」というものでした。

ぼくは、自分の安易さ加減にあきれるとともに、コンビニの戦略のうまさに舌打ちました。
独身時代、夜、毎日コンビニに行っていると、お昼に入ることにためらいがなくなっていることに気がつきました。
スーパーの開いている時間に、わざわざ値段の高いコンビニに行かなくてもいいのに。

でも、コンビニって、かなり練り込まれて作られていることが分かります。
弁当を買う目的では、スーパーより便利でおいしい。
広いスーパーでは、迷うし、時間のムダ。コンビニだと配置が分かりやすい。

つまり、吉野家の敵は、すき家もあるかもしれませんが、むしろ、コンビニの方が強敵だと考えるに至りました。

ディズニーでは、すべての業種が自分たちのライバルだと意識している。

ぼくは、何冊かのディズニー本を持っています。
ディズニーランドの案内本ではありませんよ。
ディズニーの接遇と経営に関する本です。
(実を言うと、実際は、ランドのガイドブックも買っていますが)

その中の一冊で、「ディズニーは、業種が異なっていてもすべての企業がライバルだと意識している」という項目を読み、感心しました。

まず、ホテルの予約ですと、コールセンターでの挨拶や接遇です。
ホテルでは、当然のことながら、ホスピタリティを意識しています。
ディズニーシーに隣接している、ホテルミラコスタのハーバービュー(海が見える部屋)が、1泊1室で75000円もするにもかかわらず、半年前の予約日にすぐに完売するという事実は、驚嘆に値します。
お日にちや人数によっては、日本一(値段の)高いホテルと言われている、東京リッツ・カールトンの方がお安くとれることも多いのです。

レストランでは、味と値段についての意識があるようです。
ぼくは、ディズニーのレストランは、そこそこ高いけれど、許容できる範囲で、味もこれなら、食べられるかな、というレベルを保っていると考えています。
一方、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下、ユニバーサルと略す)のレストランは、異様に値が高く、味もひどいものです。
ゲートをくぐって、外に出ると、ちゃんと納得して食べることができるお店があるので、なおさら残念でなりません。
ユニバーサルは、開業から入場数が減って危機を迎えましたが、その後の戦略で盛り返しました。
ただ、レストランについての改善はなく、一度入ったら、外に出る権限なし。だから、工夫をしない。

この姿勢に対し、ぼくは、個人レベルでのアンチテーゼを行っていました。
年間パスポートを取得することで、お昼時には外で食事をし、終わったら再入場する。
年間パスポートが割安で、1年に2回行ったら元がとれるような場合に、この方法は大変有効でした。また、年間パスポート所有者に特別なパスを買う権利があるという特権も合わせ技で使いました。
こうして、ぼくは、パークの乗り物を乗り倒してもう行かないという、小さな小さな抗議を行ったのでした。

さて、ユニバーサルのライバルは、ディズニーですか?それとも、ハウステンボスですか?

こうした発想を拭わない限り、ユニバーサルの危機は、再来すると考えるのです。

吉野家のライバルは、すき家だけではありません。
その他の深夜営業を行っている店。そして、その他、想定していない業種のお店です。