2020年6月1日
慢性炎症疾患で、うつ病の併発率が高い

うつ病の病態に脳内炎症による神経細胞の機能変化が重要か

出典:QLifePro 医療ニュース2018年7月25日 (水)配信

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 神戸大学は、ストレスによるうつ病に自然免疫系による脳内炎症が重要なことを発見したと発表しました。

 研究成果は米学術雑誌「Neuron」に掲載されています。

 うつ病患者の血液中で炎症性サイトカインが上昇することがわかっていました。
 そして、ミクログリアという脳内の細胞が活性化していることが知られていました。
 また、慢性炎症性疾患の患者ではうつ病の併発率が高いことなどが報告され、うつ病と炎症との関連が示唆されてきた。

 今回研究グループは、うつ病の動物モデルである反復社会挫折ストレスモデルを用いて脳内の遺伝子発現変化を調べたものです。

 その結果、遺伝子S100a8/a9の発現が著しく上昇していたと報告があります。
 さらに、炎症性サイトカインのIL-1αとTNFαの発現が上昇していることが分かりました。
 そして、炎症性サイトカインに対する中和抗体を内側前頭前皮質に投与したところ、反復社会挫折ストレスによるうつ様行動が抑制されました。

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 これらの結果から、

 内側前頭前皮質のミクログリアを活性化 ⇒ IL-1αとTNFαといった炎症性サイトカインの発現 ⇒ 神経細胞の応答性減弱・萎縮 ⇒ うつ病を誘発

 という機序が考想定されます。

 内側前頭前皮質は、判断能力や理性を司る領域だと考えられています。