2019年4月1日
薬の調節は、ブラックジャックと似ている

現在、月に2回、介護施設へ往診に出かけています。
当然、高齢者が中心で、認知症の方もかなりおられます。
その中で、精神疾患を持っている方、精神的に不安定な方の治療を行っています。

どこの施設や病院でもありえることですが、夜間、眠れなくて不穏になることがあります。
奇声や暴言、叫び声が響き渡ると、他の方も調子が悪くなります。
また、叫んでいる本人さんも、何らかの苦痛を感じている可能性がかなりあります。

そういう方の治療で、すんなりうまくいく場合と、調節が難しいことがあります。

こういう方の治療で、教科書的な治療法が役に立つことがありますが、病状や状態は、個々さまざまなので、それではうまくいかないこともしばしばあります

教科書的に記載されている治療法として、

うつ状態では、
ドグマチール(50) 1日3錠 朝昼夕食後
というものをみます。

幻覚やせん妄のある方では、
セレネース(1.5) 1日3回 朝昼夕食後
と記載されている場合もあります。

これは、10〜20年前の指針であるかもしれません。
また、私の感覚では、最初の処方としては、薬が多いという印象を受けます。

治療では、よくすることが必要ですが、副作用をなるべく誘発しないことも求められます。
個人的に薬に弱い方は、教科書の投与では、大きな副作用が出てしまうことがあります。
だから、最初は、少なめに様子をみることが一般的です。

生活に支障のある副作用が出て、困った場合は、薬を抜いて、元に戻ったところから、治療を始めなくてはなりません。
いわゆる、「振り出しに戻る」です。

それよりは、最初に投薬する量をやや少なめに加減して、様子を見ていく方が次の手を打ちやすくなります。

トランプゲームのブラックジャックでは、21に近づくことを目指します。
ただし、21を超えると、「どぼん」で、負けが確定します

控えめに札を出して、次の札を追加できるようにした方が、負けが少なくなります。
攻める時は、攻めますが、守りも重要になります。

スポーツや頭脳ゲームでは、「攻めは守りなり」と、攻勢をかけて、勝ちきることもありますが、トップ選手は、負けたら終わりということが深く身についているため、守りも存外強いものです。

攻め一色は、普通にやっていては勝てない弱者が、強者に挑む時に使う場合の手です。

診療では、大きな副作用や失敗は許されないため、守りが大変重要です。
こうしたことは、会社の経理や財務でも起こりうることです。