2014年6月8日
病院でのヒヤリ・ハット報告

何か行動を起こす時にミスはつきものだ。
よく知られている現状では、工場や建設現場では、「安全第一」という言葉がしばしば標語に使用されている。

ハインリッヒの法則というものがある。
ハインリッヒは、アメリカの損害保険会社にて、技術・調査部の副部長をしていた。
彼は、工場で発生した労働災害5000件余りを統計学的に調べて、計算して、ある法則を導いた。

「重傷」以上の災害が1件あったら、その背後には、29件の「軽傷」を伴う災害がある。
さらにその影には、300件もの(危うく大惨事となる)傷害のない災害が起きている。
この傷害のない災害を「ヒヤリ・ハット」という。
(以上、Wikipediaからの引用)

この段階で、食い止め、対策を立てることができら、それ以上の災害に進展しにくいということだ。

医療機関でも、この法則を参考にして、実践するように求められている。
当然ながら、医療事故は起こしたくないもの、起こされたくはないものだ。

ただ、現実には、ヒヤリとした危なかった体験や軽傷例は、どこの機関にも存在する。
規模が大きければ、その発生の期待値が上がって当然だ。

しかしながら、その事故、あるいはその前段階が極めて少ない病院と、異常に多い病院とが存在することは否定できない。
こういうものも、正規分布に従って、その数が存在するのだろう。

それはさておいて、重大な事故をなくすための工夫は必要となる。
それが、「ヒヤリ・ハット」の活用だ。

何とか無事だったけど、危うかった事例を報告して、教訓として、他の人や後進に活かすことを目的とする。

これは、うまく活用できれば有効な安全対策となる。
今、私が行っているものの1つにこれが入る。
そうは名付けていないけれど、確かに入る。

さて、この「ヒヤリ・ハット」報告は、ある程度以上の病院では、ほぼ施行されているものと思われるのだが、活用が今ひとつであることが多い。

この報告は、次に活かすためのもので、「報告した人を責めない」という原則がある。
この責めを行っていくと、危ない現場を隠蔽して、ますます危険な状態になるからだ。

しかし、実際、病院に勤務していた時、報告すると、その責を問われることも多かった。
また、そういうお叱りをするのが好きな上司がいて、おおいに邪魔になった。

ある時、病院全体で報告されたヒヤリ・ハット報告書に目を通すと、驚くべきことが多数書かれてあった。
それは、何かが危なかったので、気をつけようというような世界ではない。

▼○○さんが、なんとかして…あやうく…なりそうだった。
▼□□先生に報告したけど、無視されて意見をもらえなかった。
▼××先生は、呼んだけど、来なかった。

など、名指しで人を攻撃する報告が散見されたのだ。
そりゃ、協力しない人はよくないでしょう。
あなたの言うことにも一理ある。
しかし、この場は、悪口合戦の場ですか?

見ていて悲しくなった。
こうした例が直接の引き金ではないが、「この病院にこのままいたくない」という感情が頭をよぎったことはいなめない。

ヒヤリ・ハットは、冷静な報告に。
そして、次の改善策を考える手立てに使おう。