トラウマ その3 虐待

4種類の虐待

身体的虐待
外傷の残る暴行、生命の危険のある暴行

心理的虐待
親が子供の存在を否定するメッセージを与え続けること
「お前は生まれてくるはずのない子供だった。お前は間違って生まれてきた」

性的虐待 
親などの養育者が子供に対して性的な行為を行うもの。愛撫など性的な意味を持つ接触を含みます。

ネグレクト
子供の保護に対して責任のある成人が子供にとって必要な行為を行わなかったり、子供を不当に扱うこと

被殴打児症候群

1960年初頭、アメリカの小児科医ケンプが親によって身体的な傷を負わされた子供にみられる特徴をあげました。
低年齢の子供が多く、4歳以下が過半数を占めています。
全般的に子どもの健康状態がよくありません。
栄養状態が悪く、不衛生な状態に置かれており、親からかまわれていないようにみえます。
新旧様々な傷が多数みられます。
子供がどのようにして傷を受けたかについて、親の説明が矛盾しています。
子供を入院させると(入院期間中は)、新たな傷が生じません。

→ 親からの暴力が繰り返されていること、不適切な養育環境に長い間置かれている
= 身体的虐待 + ネグレクト

子供の欲求や要求と無関係なところで子供との関係をもとうとする所に虐待が生じる
そこには親自身の欲求が存在する

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親子の役割逆転

子供が親の欲求を満たす役割を担い、親は子供の存在によって欲求を満たされる関係

例)2歳半の子に九九を覚えさせようとする母親
自分の勉強したい、知識をつけたいという欲求を子供を通じて満足させようとしていました。

父親から身体的な暴力を受け続けていた女性
18歳になるまで、「私は暴力を受けるのはどうしようもない私の悪い所を直してくれようとする愛情の現れなのだ」と信じ続けていました。

親からの暴力が子供に与えるメッセージ
あなたは悪い子だ
暴力の原因を子供に押し付ける

見捨てられ不安

親から暴力を受けると、どうしようもない悪い子という心理的自己イメージを持つ子になりやすくなります。
親から見捨てられるのではないかという不安を持ちやすくなります。
幼い子にとって親から見捨てられることは世界が崩壊するような恐怖を与えます。
不安の結果、子供は必死の思いで親にしがみつきます。
叩かれれば叩かれるほど親にしがみつくというパラドキシカルな状態になります。
(成長してくると、子供は親が買い物などで外出しても留守番をして待つことができます)
虐待を受けている子供は親が自分をおいて出かけると、もう帰ってこないのではないかという不安に襲われてしまいます。

小さな大人的になる子供がいます
大人の思いや要求を先取りします
大人の顔色を見ながら自分の行動を決定します
= 偽成熟といい、本当に成熟した人格ではありません
本来、子供がもっている健康的な依存性や創造性は心の奥底に押し込められてしまいます
= 抑圧

愛情遮断症候群

ネグレクトでおこります。
生活全般にかかわる一般的ネグレクト
子供が病気でも放っておく医療ネグレクト
子供に適切な教育の機会を与えない教育ネグレクト
ネグレクトを受けている子供は身長、体重ともに標準を下回ることが多くみられます。

= 愛情遮断症候群
愛情が断ち切られることによる成長の障害

ネグレクトは一緒にいながら見捨てられた状態
身体的虐待の場合、暴力や攻撃といった否定的な形で子供にエネルギーが向けられています。
身体的虐待を受けた子はゆがんだ形ではあっても何らかの対人関係を求めてくるのに対して、ネグレクトを受けた子は人といっさいのかかわりを持とうとしない傾向にあります。
⇒ 「誰にも見捨てられないように消えてしまいたかったもの」と後に言った女の子
引きこもり傾向や孤立化は親から、世の中から見捨てられたという心理的な体験を反映します。

否認される性的虐待

欧米での統計では、性的虐待の占める割合は全体の2〜30%と幅が広く、実態は不明です。
日本では1%以下になっています。
日本では表面化されないケースが多いのと、性交そのものしか数に入れないからという統計学的な事情もあります。
特に性的虐待は家庭内のこととして外部の目から隠されます。

仮に母親が、父親が娘に性的虐待を行っていることを知っても外に漏れることを恐れます。
親のもとから逃げ出すことのできない子供の事情もあります。

心理的逃避
ある少女の場合、性的虐待が行われている間、身体をベッドに残したまま意識だけが美しい草原を訪れていたという
いわゆる幽体離脱に似た症状でしょうか。
精神科的には解離現象と呼びます。
極端なストレスのもとで自我を守る心理的メカニズムです。
その状態が悪化した場合では、解離性同一性障害(=多重人格性障害)となることもあります。

テア著 「記憶を消す子供たち」
昼の子と夜の子を作り出す子
昼 = 裕福な家庭で親の愛情あふれた関係を持つ
夜 = 性的虐待を体験し、無力感や罪悪感を引き受ける

性的虐待を受けた子供は秘密を自分の心に持ったまま環境に順応してゆきます。
そして、思春期に劇的な変化を見せ、家出、万引き、喫煙、シンナーなどの非行を行うことがあります。
こういう子には、身体的な訴えが多くみられます(特に喉や下腹部の痛み)。

心理的虐待

子供に与えるダメージの大きさが認識されるようになったのはつい最近
自分には生きていく価値がないと悩み、うつに陥った若い女性
おまえはおれのこどもではないと言われ続けた男性
存在や価値を否定される
「おまえは生まれてくるはずの子じゃなかった」
「お前さえいなければすべてうまくいく」
→ 自分は存在してはいけない、自分には生きる価値がないと考えるようになる