2019年1月31日
診断が分からないもどかしさ

病気の診断って、すべてが正確につけられるわけではありません。
「正確に」ということは、ある程度理解できると思います。

実際の現場では、見え方によって、まったく異なる診断がついてしまうことがあります。

以前、発達障害の中で、自閉症スペクトラムという疾患は、統合失調症とよく間違われました。
それは、発達障害という診断概念そのものがなかったからと言えます。

統合失調症の疑いがある、でも、判然としない。
それでも、何らかの診断をつけないといけない、という場合に、30年以上前では、統合失調(当時は、精神分裂病と呼ばれていました)と診断がつけられる例が多かったと思います。

今でも、統合失調症と自閉症スペクトラムの診断に迷う例が散見されます。

統合失調症と自閉症スペクトラムは併存しうるという、論文も出ており、明確な診断がつかない症例は、かなりの数にのぼると思います。

神経症だと思っていた方が、10年後に明らかに統合失調と診断できる病状に悪化したこともあります。
そうならば、初期の神経症は、統合失調の前駆症状だったのか、と言われればそうかもしれません。
しかし、そうでないかもしれません。

うつ病として、20年以上、罹患していた人が、ある時期、急に病院に来なくなりました。
しばらくして他の家族とやってきて、明らかに幻覚や妄想があって、具合が悪くなっている、という例もありました。

ならば、それまでの「うつ病」の診断が間違っていた?

でも、あながち間違いと言うことはできません。
それまでの間、統合失調症の症状がまったく見られないのに、そう診断をつけることはできません。

病気というものは、人によっては、けっこう大きな症状の幅があり、その帯のどの断片を切り取るかによって診断が変わるケースがあります。

これは、仕方がないことです。

大腸のポリープには、正常でもなければ、癌とも言えない、異型性を持った組織細胞がよくみられます。

その中で、一部は癌化しているものもみられます。
・ポリープを放置していたら、癌化した
・あるいは、元々ポリープにがん細胞があった。

実は、どちらか分からないケースが多いのです。

一般科では、「疑わしきは、黒と思え」という見解があります。
癌か癌でなければ分からない場合は、癌だと考えて検査ならびに治療を考えなさい、というものです。

精神的な領域で、これをそのまま受け止めると大変です。
疑わしきは、みんな病気になります。
だから、もっとしっかりした根拠が必要となります。

それにしても、本当のことを言わない、あるいは、あえてウソを言う人の診断は難儀します。
どうやって対処しようかと思うことがよくあります。

そういうケースにあたると、こころ穏やかではありません。