2019年12月19日
健康保険のあり方が変わっていく

年々、社会保障費が厳しくなっていきます。

高齢の方が増えて、若者が減っているため、負担が難しくなることは明らかです。
人口動態が雄弁に語っています。

来年の4月に健康保険の適応が変わります。

テレビで観た、ニュースで聞いたと言われる方がおられます。
テレビをみない私には情報になります。

 

・花粉症の薬
・湿布薬
・お肌の薬

などが対象になりそうです。
3月中旬以降でないと正式発表されません。
(今回は)運よく逃れた、あるいは予想より厳しかったという話が起こり得るでしょう。

薬局で売っている薬を病院で処方してもらうと、三割負担のため、安くなります。
初診でかかる方の場合は、診察料や調剤料も必要となるため、びっくりするほど安くはならないかもしれません。

一番おとくなのは、元々、医療機関を受診している方が、上乗せで、花粉症の薬や湿布薬を処方してもらった場合です。

自費だと3000円以上かかる薬が100円〜300円になることがあります。

これによって、年間の医療費が2000億円以上、削減される見込みです。

もちろん、問題もあります。
花粉症の薬を飲まないでいると、ボーとして作業効率が落ちるという、生産性の低下が起こり得ます。

また、花粉症の薬は、皮膚科で処方する、アレルギーの薬と重なることがあるため、アトピーなど、皮膚疾患を持つ人が困る可能性があります。

また、軽い症状の内は、「お金がもったいない」と受診抑制していたら、症状がひどくなって余計に医療費がかかる場合もあります。

 

一方、看過されない問題もあります。

ヒルドイドという保湿剤は、化粧品に使われる成分です。
高級化粧品の代わりにヒルドイドを使っている例が確認されています。

しかも、自費で買うことのできるチェーン薬局が、自社の社員(パートも含めて)ほしい薬を出すから、言えという。

処方箋を自社の薬局に持って行かせて投薬すれば、調剤薬局部門が儲かります。
こういう組織的に利益を吸い上げる仕組みも存在します。

だから、2年前の改訂の時、すでにヒルドイドは、自費にしようという話題が出ていました。
美容目的に使用していると想定される額が93億円です。
1年間で、60億円も費用が増えたのは、異常でしょう。

そのため、ステロイドと混合したものだけを健康保険の対象として、単独処方は、自費にしようという話が出ていました。

湿布についても、やはり自費にという話が出ていました。
しかし、いきなり自費とはせず、一度に処方できる枚数を70枚までと、量の制限を行ったのです。

 

ニュースを聞いて知った人には、青天の霹靂(せいてんのへきれき)と感じられるかもしれません。

途中経過とその流れを見ている者にとっては、不思議な話ではないのです。

健康保険をはずした薬は、すでに存在しています。
イソジンガーグルなどの「うがい薬」です。
うがい薬は、抗生剤などと一緒に処方されないと自費になるはずです。

日本の医療では、自費の薬を1つでもはさめば、診察料も含めて、すべてが自費になるという制度があります。
(混合診療の禁止というものです)

そのため、うがい薬は、薬局で購入してね、ということになるのです。

 

こうした取り決めには、賛否両論あります。

自費での薬剤購入が増えると、チェーン化している薬局が儲かります。
最近の大手の薬局は、スーパーに負けないほどの品揃えをしています。
値段もスーパーより安く設定していることが多いです。

後は、食材だと言われていました。
その食材自体も売っている店が出てきました。

スーパーの苦戦は、スーパー同士の競争や消費マインドだけではないのです。
他業種にその地位を奪われていることにもよります。

私が住んでいる街は、明らかにドラッグストアが多く、過剰な競争になっていると思われます。
スーパーの売り上げの方が少ないように感じられます。

健康保険でまかなえていた薬をドラッグストアで購入するようになると、当然のことながら、ドラッグストアが儲かります。
薬の利益が高いため、他の商品は儲からない、あるいは、多少の赤字でも提供できるのです。

ドラグストアを儲けさせるチャンスになりますので、チェーンドラッグストアでの調剤料を下げてもよいのではないかと思われます。

元々、医療機関や調剤薬局は、医療法人として、過剰に儲けることを禁止しています。
そこに、株式会社が参入したわけです。
そして、大手の調剤薬局の役員は、億の金を、経営者は10億を超える報酬を手にしていることが明らかになったわけです。

株式会社だから、よく考えて利益を出しているという考え方もあります。
実際、大手のチェーン薬局と小さな調剤薬局では、卸値が異なるのです。
いわゆる、スケールメリットというものです。

ヤマダ電機は、10万台単位の買い取りを保証するから、メーカーに独自の製品を安く作ってもらうことができるのです。

同じことが、調剤薬局でも起こっています。
処方箋で出す薬剤だけではありません。

自費で購入する薬剤は、さらなるメーカーとの交渉により、保険で購入するさらに安い値段で仕入れています。
そのため、OTC医薬品(いわゆる薬局で販売されている薬のこと)は、利益率が高いのです。

 

こうした仕組みにより、診療所そばにある調剤薬局で、大手のチェーン薬局の傘下に加わったところもあります。
小さな薬局は生き残れないかもしれません。

しかし、これも変な話です。
ヨーロッパでは、街中に小さな薬局が点在しています。

看板を出すことが許されないフランス、パリの街中で、薬局は、その目印の看板を出すことが認可されています。
公益機関であるとみなされているためです。

 

すべてが悪いことではありません。
しかし、現在のチェーン薬局の医療への関わり方には、問題があると感じています。

・調剤薬局への甘い監査
・不正行為の横行
・不正行為を行った後の処罰の甘さ
・薬剤師に対するブラックな働かせ方
・本来、値引きしてはいけない保険の仕組みに対して、株式会社では、ポイント還元という値引きを使う

など、公平とは言えない行為がいくつもみられます。

限られた原資の社会保障費の中で、医療機関と調剤薬局が基金の綱引き(奪い合い)をしているという実態もあります。

 

医療費がさらに増加すると見込まれる2022年や2025年には、さらに踏み込んだ議論がなされるはずです。

高額な医療にもメスが入るでしょう。