2019年5月20日
精神科救急が整っていないこと

連休は、病院の営業日が少ないため、救急体制を保つことができるかどうか、心配になりました。
医師不足の地域は、特に懸念されます。

同時に3件の救急車が来ても、同じ医師は、1件ずつしか対応することができません。
日中なら、ともかく、休日、特に夜間の体制はだいじょうぶでしょうか?

身体科でも、日頃からこういうリスクを感じています。

一方、精神科では、入院施設のないところでは、安易に病状の悪い人を受け入れることができません。

ある日、内科の先生から、病状が悪くて急ぎの患者さんがあるから、診てほしいと連絡がありました。
しかし、イライラいて暴力も起こりそうなことで、当院でも診ることが難しいと思われました。
それで、当院でも対応が難しいとお答えすると、
「それなら、どこに紹介したら、いいのですか!」
と怒気を含んだ声で詰問がありました。

「それは、入院施設のある病院系でお願いした方がいいと思います。近隣だと○○病院になります。お力になれなくて、申し訳ありません」
とお答えいたしました。

そして、その後、仕事が終わってから、「なぜ、当院での治療が難しいのか」という説明を文章化してお送りしました。

その説明の肝になるのが、精神科では、「救急車がない」ことです。
いえ、もう少し現実的に言えば、精神科救急の体制が未整備なことが原因です。

一般科だと、一度患者を受け入れても、手に負えないと、一次救急から二次救急に送られます。
さらに、二次救急でも、対応が無理だと判断した場合、三次救急に搬送されます。

精神科では、そうした救急体制がないのです。

引き受けた後、病状が思わしくないため、病院に入院あるいは、外来治療のお願いをしたことろ、引き受けていただけませんでした。
その患者さんは、夜中に病状が悪化したため、警察に保護されて、救急入院になりました。

このような轍を何度も踏んでいるため、具合の悪い方、救急に相当する、あるいは準じる方は、病院に紹介していただくよう、お願いしているのです。
外来だけのクリニックでは、対処できないため、中継ぎをしないで、直接病院にかかった方がいいのです。

残念なことに当院が在席している県では、救急体制が、大変貧弱です。

通常であれば、精神科を有する県立の病院を最低1カ所は、確保していなければならないことになっています。
ところが、不思議なことに、身体科の県立病院は、4カ所あるにもかかわらず、精神科を持っている県立病院は、1つもありません。
(いくらか前は、規模が小さいけれど、1つだけありました)

以前、母校(岡山大学)の大学病院に勤務していた頃、大学病院の近くに県立病院があって、そこが精神科救急を行っていました。
そのため、診療所にかかっている方のみならず、病院に受診しているのに具合が悪い方は、そこに受診していました。
救急時には、県内から広く受診していました。

そういう受け入れ先があると、我々も安心して診療を行うことができます。
受け入れ先がないと、「この患者さんは、大丈夫だろうか」と一次医療も躊躇してしまうのです。

身体科には、身体科の苦労がおありになると思います。
一方、精神科には、精神科ならではの悩みがあるのです。