2019年6月17日
老舗のラーメン屋は、生き残るか?

私が生まれた街に、戦後間もない頃から繁盛している中華そば屋があります。
いわゆる、「尾道ラーメン」の代表格として紹介されることも多く、休日の行列は必至です。

店主の下で、息子さんと覚しき若者が働いており、いずれは、店を継いでゆく準備を進めているように見えました。
もう1つの老舗には、そういう跡継ぎがいないため、来客数だけでなく、将来30年の明暗も分かれてしまった、という風に考えていました。

しかし、その老舗が、6月19日(水)から、しばらくの間、休業するという張り紙を出しました。
有名店なので、ネット検索にも情報が引っかかり、しばらく休業 = 再開のめどが立っていない、と報道されていました。

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私は、店の席数と回転率から考えて、多い日は、1日600〜700人くらい来店していると推定していました。
ところが、ある記事によると、1日千食出ている日もあったそうです。

私と息子が行くと、2杯ずつ食べることがよくありました。
さらに、持ち帰りを注文される方も結構おられました。

そのため、来店数より多くの食材が出ているのでしょう。

そんな繁盛店が、突然、無期休業するのは、店主の体調に違いないと推測しました。
いくつかある記事のうち、「店主の体調が悪いため」と書かれてありました。
2000万円で、経営権を買いたいと希望した企業もあると聞きました。

記事の中には、「閉店」と記載されているものもあり、店の存続そのものが危ぶまれている状態のようでした。
帰り道、少しだけ母親のところによって話しました。
店が休業になることは知っていて、店主は癌だという話が普通に飛び出しました。

「息子に仕込んできたけれど、独り立ちするには、まだ修行が足りないということだろう」
と地元では、公然の秘密がささやかれているようでした。

息子さんは、券売の仕事やお客さんに器を運ぶ接客の仕事をしていることは知っていました。
息子さんは、普通にみると、同じ店員の1人のように見えますが、他の従業員よりも遅い開店時間近くになって、店主と同じ車に乗って出勤していることから、明らかに一般従業員ではないということが読み取れました。

実は、今の店主にも先代(創業者)がいて、なかなか独り立ちを許してくれませんでした。
店主が、先代と同じ、麺を茹でる担当になったのは、40代になってからではないかと想像します。
先代は、70をすぎたと思われる高齢になった時、現在の店主に店を任せ、自分は、11時の開店時間からの1時間と午後3時からの1時間だけ、客の前で仕事をしていました。

大体、名店で、よく口にされる言葉があります。
店主が代替わりをすると、「前より味が落ちた」と言われます。
同じ味では、「落ちた」と評価されることが多いため、先代を上回らければならないプレッシャーに跡継ぎは見舞われます。

そのため、息子さんには、下積みも含めて、ゆっくり教育していたのでしょう。

しかし、今回の出来事で、その下積み修行が間に合わなかったことが明らかになりました。

今後の休業期間で、息子さんは修行を早めて、店を継げるのでしょうか?

息子さんの立ち位置としては、
・店を継ぐ
・廃業して、新規で働く

という決意以外にはないでしょう。

店主が経営権を売って、当座を凌ぐということはあり得ますが、現段階では、息子さんに決定権はありません。

最近、訪れることが減った店でしたが、今日は最後かもしれないと、赴きました。
普段なら、空いている3時すぐに時間でも行列は絶えませんでした。
待つ人の列は、建物に添って、後方の曲がり角で折れ曲がって続いていました。

店に入ると、息子さんは、明るい表情でした。
あるいは、明るく振る舞っていたのかもしれません。

その挙動をみて、息子さんは、店を継ぐ覚悟を持っているように感じました。

今日は、嫁も私と同じく2杯のラーメンを食べました。

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細かい脂が薄く広がっているのは、よい兆候でした。
一方、できのよいスープは甘いのですが、今日は、酸味を感じたので、煮込み時間のずれか、アク取りの加減か、何らかの微妙な不具合もあったものと思われます。

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ラーメンでは、10年以上存続すると、老舗と言われます。
現時点で70年続いている代表格の老舗がどうなっていくのか、見守りたいと考えています。