2020年2月21日
燃え尽きる前の症状?

認知症で施設入所された初期、慣れない環境で、これまでなかった困った症状を呈する方がおられます。
なじみの環境から知らない場所に変わると、意識が変容するのでしょうか。

90歳を越えた高齢の方で、夜間、激しく動き回り、ベッドに放尿するなど、介護者にとって、つらい状況となった方がおられます。

可能な限り、薬物調整を行いましたが、1ヶ月以上、落ち着かない症状が続きました。
そうして、辛抱強くみている内に、少し寝ている時間が長くなったから、薬を減らしてみてはどうかという提案が介護側から出ました。

医師は、神様ではありませんので、自分が知らない情報は、身近な人に聞かないと分かりません。
そうした中、無理なく減薬していきました。

そして、数ヶ月後には、まったく薬の必要のない状態になりました。

というより、むしろ動きが少なく活気のないお年寄りに変貌しました。
少しすると、1日の中で寝ている時間の方が長くなり、食事も全介助になりました。
さらに時間を経ると、ホールに出ても力なく横たわり、食事も口を開けた時に流動食を少量注入するほどに機能が低下しました。

入所当時の暴れぶりは何だったのだろうかと不思議に思います。

分野はまったく異なりますが、太陽のような恒星は、消滅する前に大きく膨張して、臨界点で爆発して星としての寿命を全うすることがあります。
また、一端、膨張した後、重力密度の増した白色矮星に姿を変えることがあります。

高齢になると、少しずつ老衰していくイメージがありますが、そうでない例も多くあります。

骨折を堺に急に体力低下を来すことがよくあります。

また、上記の例のように、一度激しい認知症によるBPSD(認知症の行動と心理症状)を起こした後、急に活気を失う場合があります。

また、BPSDの後に身体機能が低下して、当初の予定より早く急逝される方もおられます。

認知症による困った症状の典型例はいくつもありますが、個人によって、経過は異なります。

それは、人がみな違うように個別に考え、対応していくしかないのです。